日本にとっての自由貿易

今日の米国で、心情的には保護貿易主義が支持されがちな環境の中で、政策原理としての自由貿易の正当性を主張し続けているグループの存在は重要である。これらの運動に参画している人たちから「日本はなにかといえば、自由貿易の重要性を語るが、どこまで本気で自由貿易の正当性を信じているのか」という鋭い質問を受けたことがある。

つまり、自らの当面の利益につながる便宜的論拠として自由貿易を主張しているのか、それとも日本の経済体質を考察し世界経済を拡大均衡せさるための信念体系として自由貿易を主張しているのかを自らに問いかけてみる必要をこの言葉は示唆していると思われる。

セーフガード(緊急輸入制限)条項の発動

A・スミスの国際分業論、D・リカードの比較生産費の理論にさかのぼり自由貿易のもたらすメリットを強調することができるほど今日の国際経済関係は単純ではない。GATTのセーフガード(緊急輸入制限)条項の発動をはじめ、各国の産業調整政策をある程度許容した「修正自由貿易主義」が、現実的に主張できる限界であるともいえる。

しかし日本としては、短期的利害の視点を超えて管理貿易の流れを抑える見識が必要であり、ニューラウンドに向けて自由貿易の主導者であり、国際国家たらんとすることの責任を具体的に遂行しなければならないであろう。

海外直接投資を拡充

また同時に現実に存在する摩擦をバネとし、貿易から一歩踏み込んで海外での事業拠点の経営を目的とする海外直接投資を拡充し、よりグローバルな視野から経営資源を調達・運用するという形で産業と企業の国際化を進めるなどの知恵も求められているといえる。

円高環境への変化の中で、輸入促進や市場開放に対する関心を一気に冷却させ、当面の輸出競争力の回復だけに血眼になる体質では、国際経済社会のあるべき秩序を語る資格を問われてしまうのではないだろうか。